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連載その4。実在の場所だから描けたこととは?

スタジオ・ゼロの橋野です。
「過去にインタビューなどで聞かれたことを振り返り、今、これからの為に想う事」を綴らせてもらっています。4回目の今日は「実在の場所だから描けたことは何?」というクエスチョンについて。幻想世界の作品に取り組む上でも、振り返りたいと思います。

ご紹介するのは、海外で有名なゲーム専門誌「EDGE」さんからの取材です。「『ペルソナ4』は(架空の)田舎町を舞台にしており、東京とはとても違う環境ですが、『ペルソナ5』ではなぜ都会へと切り替えたのでしょうか?また、架空の舞台ではできなく、実在する場所の舞台でしかできないことはありましたか?」というご質問でした。

『ペルソナ4』で田舎町を舞台にした理由は3つあります。1つめはノスタルジーを表現するため。2つめは「均質化が起きて多様性を失っている郊外のコミュニティ」を舞台にしたいと思ったから。牧歌的なイメージで見られがちだが実態はそうではない田舎のリアルな一例として、田舎のシャッター商店街を選びました。そして3つめは、シナリオで描きたかった推理小説風のサスペンスと上手くマッチさせるためで、これらの設定は割とスムーズに決まっていきました。

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「↑昔、アトラス公式ブログで紹介したことがあるテストショット。『ペルソナ4』の開発初期のものです。細かい設定すらない頃のもので、『ペルソナ3』の寮の目の前を田舎化して歩いてみたりしました。開発室ではウケたような、ウケなかったような(汗)。」
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「↑ただの田舎だと作品の特徴がうまく出せなかったので、天気の概念を物語と舞台設定に入れ込んで、どんよりした影の部分の雰囲気を作っていきました。設定のモデルにした町にロケハンにも行きました。もちろん雨や霧の設定は架空です。」

しかし、続くペルソナ5では、舞台となる街自体を「実在の東京」と決めるまで、かなり迷ってしまいました。というのも、怪盗活劇の舞台として都会は相性が良かったので、そこまではスムーズに決めることが出来たのですが、実在の地名、特に「東京」という名前は、ペルソナシリーズの前身である『真・女神転生』の世界観設定における不可欠のキーワードであり、重複を避けるべきだという先入観があったのです。僕が『真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE』をディレクションしたのは15年も前の話になりますが、女神転生の世界観にとって「実在の東京」という記号は「本当に起こるかもしれない。知らないだけで水面下では進行しているのかもしれない」という、現実世界の二面性や臨場感を作品に与えるための非常に重要な要素だと考えており、そこから派生したペルソナシリーズは、それとは異なるアプローチとして、常に架空の街を選んできたはずだ、という強い認識がありました。しかし、現代日本で怪盗が世間を騒がせる「架空都市」のイメージが、どうにもうまく作れませんでした。

最終的には、ご存知の通り「東京」になったのですが、決めるに至るまでの紆余曲折は(細かい話で恐縮ではあるのですが)先入観を消さないと選べなかったことなので、苦労を聞かれると真っ先に思い出すことの一つです。ただ、このことがあったおかげで、実はこれから挑む「最新作」での物語舞台を、現実ですらない「幻想世界」に置き換えることに躊躇せずに済んだ…とも思っています。このあたりの話は長くなりそうなので、次回、お話しますね。

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「↑EDGEさんのインタビュー記事の一部です(手元に雑誌がなくPDFの雑な直撮りでスイマセン)。レイアウトが格好いいです。海外雑誌の記事なのでリンクは貼れませんが、質問も独特で面白く、次回以降も回答の一部をご紹介予定です。)

PS:週刊ファミ通さんの今週号(7月20日売り号)にて、担当近作である『ペルソナ5』が「ジャンル別ゲーム総選挙/RPG編」という企画にて、なんと1位に選ばれました。歴代のRPG全ての中でアトラスの作品が1位とは…嘘かまことか、偶然か、奇跡か。しかしなんにせよ、シリーズはもちろん、スタジオ・ゼロの新しい取り組みにも、ご期待ください。今回はたまたまの偶然であったに違いないと思いますが、いつかナンバーワンのRPGだと自認も出来るような作品をスタッフと創り上げたい。そんな想いです。この場を借りてありがとうございました。